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今週も国内外で数多くの気候変動・脱炭素関連のニュースが溢れていました。みなさんが印象に残っているものはどのようなものがありましたか?
グリーンウォッシングの摘発や「woke capitalism(覚醒した(意識の高い)資本主義」としての批判が相次ぎ、意義が問われているESGに関する続報、電力の逼迫状況、原発、EV、新しい技術への期待等、「気候変動」のレンズを通すことでいろいろな事象が関連していることが伺えます。引き続き海外と国内での報道量のギャップにも驚かされることが多いです。
さて、今回冒頭でお伝えしたいと思ったトピックは気候変動・脱炭素分野のキャリア構築についてです。岸田政権が掲げている新しい資本主義の中でもデジタルとともにグリーン(脱炭素)が大きなテーマとして掲げられていて、今後経済成長のためにも人材育成、職業訓練に投資することが伝えられています。
「職業訓練、デジタル系3割に 成長産業へ労働移動促す」[6/6/2022 日本経済新聞]
脱炭素社会の実現に向け、太陽光発電など再生可能エネルギー関連の技術に関する講座もつくる。ESG(環境・社会・企業統治)投資や法令に関する知識を習得できる機会も提供する。 労働市場のニーズに適したリスキリング(学び直し)に力を入れる欧州の事例を参考にする。
ここからは自分なりに感じていることを書いてみます。もし1年後、3年後のキャリア構築を脱炭素、気候変動関連分野でと考えた際、海外のように数多くの「気候テック」のスタートアップが日々生まれ、成長している状況であればそのような企業への転職のイメージを抱きやすいと思われます。もちろんまだ数は少ないですがVC投資が積極的になされ、目に見える形で業界が生まれつつあることを感じます。
一方、国内でも少しずつ気候テックと呼ばれるスタートアップは生まれるつつあるものの、米国、欧州と比べるとその規模は比較にならないほど小さい、というのが現実と感じています。上記記事の中で紹介されているような「太陽光発電など再生可能エネルギー関連の技術に関する講座」は大切ではあるものの、ビジネスパーソンの多くがみなソーラーパネルの技師になるということはあまり現実的ではなく、より幅広い分野でのスタートアップ、新事業が生まれることが期待されてます。
私が先日受講した気候変動について学ぶオンライン講座「Terra.do」の目標は『この10年間で1億人の人が気候変動に関わるキャリアに就くことを支援する』ことが掲げられています。2年前に設立され、現在の卒業生は約1,400人程ですが、学びを共にした仲間が参加するオンラインコミュニティの中では頻繁に求人情報を共有し、実際にそのような経緯で転職するケースも数多く生まれています。
He quit Google to work on climate change. Now, he’s helping others do the same thing - In July 2020, two former Google employees launched a Slack network for people who want to work on climate solutions. It now has more than 8,500 members. [6/1/2022 Fastcompany]
Fastcompanyの「気候変動に取り組むためにGoogleを辞め、他の人が同じことをするのを助けている」という記事によると、気候変動対策に取り組みたい人たちのためのSlackネットワーク、「Work on Climate」は2020年7月に2人の元グーグル社員により設立され、現在既に9,000人近い規模にまで成長しているとのことです。創業者2人はともに「Terra.do」の卒業生徒のことです。こうしてつながりが更に広がり、学び、コミュニティ、キャリアのエコシステムが構築されている様子が伺えます(以下はWork on ClimateのDeepLにより翻訳されたページ画像です)
転職に有利なのは「リンクトイン」より今や「スラック」 [6/1/2022 ウォール・ストリート・ジャーナル日本版]
ちょうど同じ日に掲載されていて「なるほど」、と思ったのがこちらの記事。元々は社内のコミュニケーションを効率化するために生まれたSlackが今では社外の同じ業界やテーマ毎のネットワーキングや転職を促進するコミュニティとして注目されているようです。
国内の気候変動、脱炭素関連の報道を眺めていると、今は「学び」のモードで、国内海外で目まぐるしく起きていることを知ることに重きが置かれていて、実際に行動する、そしてキャリアとして取り組むということも、今後少しずつ増えていくことと思います。そんな際に「Terra.do」、「Work on Climate」のような学び、コミュニティ、キャリアへと道が拓ける環境つくりがとても大切になっていくと感じます。実験的にでもそんなコミュニティ作りに貢献できたら、と思ってます。興味がある方はぜひご連絡いただけたら嬉しく思います🙂🤞
⭐今週気になったニュース・トピックス
原発エコノミーの真実 [6/6~10/2022 NewsPicks]
*↑賛成、反対ではなく、歴史、今起きていることが詳しく報じられていて、知らなかったことが数多くある特集記事でした。
資本主義NEXT 日本は脱炭素を実現できるか[6/7~(全10回)/2022 朝日新聞]
*↑リベラルな視点から懐疑論含め日本の脱炭素の今後についての連続特集記事が掲載されてます。
電気不足、冬に110万世帯分 原発動かず節電頼み限界 〜エネルギー危機 日本の選択㊤&㊥&㊦ [6/6, 7, 9/2022 日本経済新聞]
*↑ロシアがウクライナに侵攻する2カ月前、東京電力ホールディングスと中部電力が火力発電・燃料事業を統合したJERAにより、25年も継続調達していたカタール産の液化天然ガス(LNG)500万トン超(年間ベース)の引き取りを終了したことが書かれています。エネルギーの安定供給の難しさ、厳しさが感じられる記事でした。
How ESG investing came to a reckoning - With allegations of greenwashing at the highest levels, does it still make sense for funds to package together environmental, social and governance factors? (ESG投資が見直されるまでの経緯〜最高レベルのグリーンウォッシュの疑惑がある中、ファンドがESG(環境、社会、ガバナンス)の要素をパッケージ化することは、まだ意味があるのでしょうか?』)[6/6/2022 Financial Times *要約 by summari]
*↑ESG が直面する状況をまとめた特集記事、いろいろ考えさせられる内容でした。気候変動、ジェンダーの多様性、企業が地域社会に与える影響などの様々な問題について考えるきっかけとなるなど、ESGをまとめることで大きなメリットがある一方で、この言葉は事実上、あらゆる人にあらゆることを意味するようになり、引退が近いかもしれないと考える投資家の意見が紹介されてます。 防衛関連企業も持続可能な企業として分類され、ESG投資家が侵略的な隣国に対する主権国家の武装を支援することが可能になるとの考えも。ESGの意義が改めて問われることになりそうです。
令和4年版環境白書公表 [6/7/2022 環境省]
*↑あまり話題になってない印象ですが、参照資料として知っておきたい情報として(NHKでの報道記事)
“Deny, Deceive, Delay: Documenting and Responding to Climate Disinformation at COP26 and Beyond”(否定、欺瞞、遅延。COP26とその後における気候の偽情報の記録と対応)100ページ以上の分析レポートの公開[6/9/2022 ISD(戦略的対話研究所 )とCAAD(Climate Action Against Disinformation]
*↑コロナワクチン等に対しても問題になってきたSNS上の偽情報キャンペーンが気候変動問題についてもどれだけ大きな問題を引き起こしているかを分析したレポート、長期的に大事と思える視点として。
Ongoing energy crisis fuels strong 2022 for climate tech companies [6/8/2022 PitchBook]
*↑エネルギー危機の進行により、クライメート・テクノロジー企業が2022年まで好調を維持) 〜2021年は気候テック投資の記録的な年であり、この傾向は現在のエネルギー危機を背景に継続しそうです。今年既にに369件、合計137億ドルのVC投資が調達されているとのこと。
【参院選までもうすぐ!】将来世代×各政党 気候変動政策討論会[6/19/2022 19:00-21:00 Fridays For Future Japan]
*先月オーストラリアで行われた総選挙では気候変動問題が大きな争点になり、9年ぶりの政権交代がもたらされました。来る参院選で各党の気候変動問題への取り組みを知る機会として注目したいと思います。
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市川裕康
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