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「気候変動」「脱炭素」をキーワードにニュースの見出しを眺めているとその範囲(地理・テーマ)が広がり、頻度・スピードが加速しつつあることを日々感じます。特に今週は多くの国際会議(日米首脳会談、QUAD、ダボス会議、G7)等に併せて、新しい取組、投資、調査レポートの発表等も次々繰り出されていることに気づきます。このニュースレターでは特に海外のニュースにスポットをあて、自分の学びの振り返りとして、そして日々の会話や仕事のヒントにしていただけたら、と思い配信しています。今回は3つのテーマごとに気になる記事の見出しをリストしてみます。
【1】ダボス会議〜3つのR(ロシア[Russia]、景気後退 [recession]、金利[rate])、3つのC(暗号通貨[Crypto], 気候変動[Climate]、危機[Crisis])?
2年半ぶりに開催されたダボス会議。例年に比べて「地味」、ウクライナ情勢、エネルギー安全保障、インフレ等のトピックが中心だったとする見方がある一方で、気候変動、サステナビリティに関する話題も依然中心的な存在感を示していた、と分析する記事もありました。炭素会計プラットフォームパーセフォニ社のTim Mohin氏によると、ダボスでのプログラム、イベントにおいて、50%以上が気候変動、サステナビリティ、ESGをテーマに議論が行われていたとのことです。ただ宣言や資金拠出の発表が多く、COP26の時を振り返りながら、宣言だけで行動が伴うかは疑問がある、との懸念も示しています。
・[FT]ダボスのテーマはロシア、景気後退、金利の「3R」 [5/26/2022 日本経済新聞]
・The 3 Cs of Davos [5/27/2022 Protocol]
・ESG and Climate News [5/27/2022 Tim Mohin/ Chief Sustainability Officer at Persefoni]
以下はTim Mohin氏(炭素会計プラットフォームパーセフォニ社チーフ・サステナビリティ・オフィサー)による、ダボスにおける気候変動についての議論を振り返るインタビュー動画。
Cryptoに関してはダボスとは関係はないのですが、Wework創業者のアダム・ニューマン氏が気候テック分野で新たに資金調達、というニュースが気になりました。WeWorkの経営であれだけ大きな「失敗」をしても再チャレンジが行われるアメリカのスタートアップのエコシステムの寛大さを感じます。
WeWorkのニューマン氏が再び表舞台、仮想通貨のカーボンクレジット企業創業[5/25/2022 ブルームバーグ日本語版]
【2】オーストラリア政権交代をもたらした「気候変動」総選挙、「ティール(Teal)」と呼ばれる独立系・無所属候補者と緑の党(グリーンズ)の躍進
豪政権交代の裏に気候変動問題 無所属が与党の議席奪う [5/27/2022 日本経済新聞]
21日投開票のオーストラリア総選挙(下院選)で労働党が勝利し、9年ぶりの政権交代が決まった。モリソン前首相が率いた保守連合(自由党と国民党)は議席数を大きく減らし閣僚も落選に追い込まれた。一方で躍進したのが、環境問題を重視する「ティール」と呼ばれる無所属候補らだ。背景には有権者らの気候変動問題への強い意識があり、今後も環境を巡る政策は豪州の政界を大きく揺るがすリスクをはらむ。
Australian voters have had enough of climate inaction
(オーストラリアの有権者は、気候変動に対する無策にうんざりしている。 この国の選挙は、排出量削減の公約に懸かっていました) [5/26/2022 The Economist - *要約 by summari]
今週のエコノミスト誌でもオーストラリアの「気候変動」選挙の結果について報じてます。これまでの山火事、洪水等、気候変動の影響による災害への対策が十分に講じられておらず、主要産業である石炭を擁護する姿勢のスコット・モリソン首相に対する否定の声が世代を超えて大きかったようです。また、新しく立ち上がった気候変動対策を推進する女性議員の躍進が大きな注目を集めています。オーストラリアの二酸化炭素排出量削減目標も現在の26〜28%(2005年比)から、43%(或いはそれ以上)削減へと目標の引き上げが新政権に期待されてます。
2019~2020年のオーストラリアでの大規模森林火災はコアラの被害等も印象的で覚えている方も多いと思います。こうした身近な災害経験を経験することで「気候変動」問題が国政選挙の争点になり、投票行動に大きな変化をもたらす可能性、という意味で、このニュースはとても印象深いものでした。また、選挙直後に新しい首相が来日し、国内でも日米首脳会談、QUAD等の主要ニュースが溢れたためか、日本語メディアで豪総選挙後の分析記事、特に気候変動の切り口で描く報道がとても限定的だったことも印象的でした。
・Australia’s ‘Climate Election’ Finally Arrived. Will It Be Enough?
(オーストラリアの「気候変動選挙」がついに実現。これで十分なのだろうか? 有権者は、オーストラリアを排出量削減の世界的な遅れにした「否定と遅延」のアプローチを拒否した。しかし、新政権がどこまで踏み込むかはまだ分からない) [5/22/2022 The New York Times - *要約 by summari]
・The climate champions hoping to play kingmaker in Australia’s election The pro-business, pro-environment ‘teal independents’ could help to usher in a greener government in the May 21 vote(オーストラリアの選挙でキングメーカーとなることを期待する気候変動チャンピオンたち 〜親ビジネス、親環境の「ティール無党派層」は、5月21日の投票でより環境に優しい政府を誕生させるのに役立つだろう) [5/9/2022 Financial Times- *要約 by summari]
【3】ゆらぐ企業の気候変動対策〜株主総会とアクティビズム
気候変動問題のみならず、ESGをテーマに労働者の権利保護や格差是正を求める投資家、NGO団体等、幅広いプレイヤーによる「アクティビズム」が広がりつつあるようです。目の前のウクライナ情勢、エネルギー価格高騰によりこうした動きが揺り戻されることもある一方で、エクソンモービルの株主総会で化石燃料移行監査の推進を支持する提案が賛成多数で採択されるなど、着実に変化ももたらしているようです。
・米株主総会、課題問う場に〜 アマゾンは株主提案15件採決、格差・気候問題の対応議論[5/27/2022 日本経済新聞]
米国で株主総会の役割が広がってきた。米アマゾン・ドット・コムが25日開いた総会では過去最多となる15件の株主提案が採決された。気候変動問題のほか、労働者の権利保護や格差是正を求める内容だった。取締役の選任など経営方針を決める本来の機能に加え、社会的課題への対応を議論する場になっている。経営者は多様な利害関係者と向き合う覚悟が求められる。
・ExxonMobil investors back push for fossil fuel transition audit
Climate campaigners notch ‘overdue and powerful’ win at oil company (エクソンモービルの投資家が化石燃料移行監査の推進を支持〜気候変動キャンペーンが石油会社に「遅すぎた強力な勝利」をもたらす) [5/26/2022 Financial Times- *要約 by summari]
また、英国を拠点にシェル社と契約していた安全専門家キャロライン・デネット氏は、同社の気候政策に抗議し、今週退職のメッセージを自身のLinkedInのページで公開、更にシェルの従業員1,400人にメールを送付したことで大きな話題となりました。彼女は会社が「二枚舌」であり、「科学者の明確な警告に反して」石油・ガス事業を拡大させていると強く動画メッセージでも非難しました。
「Shellは、彼らが続けている石油・ガス採掘と拡張プロジェクトが、気候、環境、自然、そして人間に極度の害を与えていることを十分に認識しています」と、BPが犯したメキシコ湾原油流出の失敗を避けるために雇われたデネット氏は訴え、「私は、すべての警告を無視し、気候変動と生態系の崩壊のリスクを見捨てるような会社では、もはや働くことができません。」とも伝えています。
また、国連のアントニオ・グテーレス事務総長は5月25日に行われた米国セトンホール大学の卒業式でのスピーチにおいて、以下のような強いメッセージを訴えかけています。
「化石燃料への投資は経済的にも環境的にも行き止まりだ。グリーンウォッシュやスピンをいくら使っても、この事実は変えられない。ですから、皆さんへのメッセージは簡単です。気候破壊者の下で働かないこと。あなたの才能を、再生可能な未来に向けた原動力として使ってください」
ただ、アメリカ国内ではESGを過度に推進する動きに対しての批判的な考え、表明も広がりつつあるようです。例えば、英銀行大手HSBCホールディングスは、同行資産運用部門で責任ある投資業務のトップを務めるのスチュアート・カーク氏が、金融業界による気候変動問題を巡る懸念は過剰だと発言したことで物議を醸しだし、その後停職処分を受けるに至りました。
「woke(意識高い)」という言葉で揶揄、非難して、組織的に反対運動が党派性を持って展開されている機運も以下ニューヨーク・タイムズの記事で紹介されてます。
国内でもJパワーに対する「物言うESG投資家」からの脱炭素の株主提案がされていることを踏まえると、海外でのこうした動きは気になるところです。
・How an Organized Republican Effort Punishes Companies for Climate Action
Legislators and their allies are running an aggressive campaign that uses public money and the law to pressure businesses they say are pushing “woke” causes.(共和党の組織的な取り組みが気候変動対策に取り組む企業にどのような制裁を加えるのか 議員やその仲間たちは、公金や法律を利用して、「覚醒」した大義を押し付けているとされる企業に圧力をかける積極的なキャンペーンを展開している。) [5/27/2022 The New York Times - *要約 by summari]
Climate pressure from employees, shareholders rattles Big Oil
The likes of Shell and ExxonMobil are meeting resistance to ‘business as usual’ (従業員や株主からの気候変動への圧力がビッグ・オイルを揺るがす〜シェルやエクソンモービルのような企業は、「ビジネス・アズ・ユージュアル(今まで通り)」に対する抵抗勢力に遭遇している。)[5/27/2022 The Washington Post - *要約 by summari]
ここまでお読みいただきありがとうございました。今回は以上となります。ニュースレターの構成、分量、切り口などは今後少しずつ工夫・改善をして変化をしていく予定です(フィードバック、感想、ご意見も歓迎です🙇♂️🙂)。
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市川裕康
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