こんにちは。新しく登録してくださったみなさん、ありがとうございます。直近1週間の気候変動・脱炭素・Climate Tech関連の国内外のニュース・トピックをご紹介するニュースレターを配信している市川裕康と申します。継続して読んでくださっているみなさん、いつもありがとうございます。おかげさまで「Climate Curation」は現在Substackにおいて500名を超える方に購読頂いてます。先日新しくスタートしたLinkedinのニュースレターでは既に800名を超える方に登録いただき心より感謝いたします。
【⭐📰👀今週気になったニュース・トピックス】
【1】気候変動対策のテクノロジー・解決策、その背景で活躍する人物を描いた新刊『クライメート・キャピタリズム(Climate Capitalism)』(アクシャット・ラティ著)発売
アクシャット・ラティ( Akshat Rathi )さんの名前は国内ではあまり馴染みはないかもしれません。経済メディアのブルームバーグにおいて気候変動分野のジャーナリストとして過去7年ほどに渡って幅広い活躍をしている方ですが、私が初めて存在を意識したのは昨年9月にスタートした彼がホストを務めるポッドキャスト番組『ゼロ : Zero: The Climate Race』を聴き始めてからでした。毎週30〜40分程度のインタビュー形式で世界中の起業家、政治家、活動家、学者、投資家をゲストに招き、気候変動対策の解決策に焦点を切り口にした新しい情報や気付きを届けてくれることもあり、ほぼ毎週聞いている数少ないポッドキャストの一つです。そんなアクシャットさんが満を持して著書を10月12日に出版されたということもあり、発売日にKindle版をダウンロードし、早速読んでみました。
書籍のタイトルである「Climate Capitalism」はそのまま翻訳すれば「気候資本主義」です。そもそもこうした脱炭素の取り組みと資本主義は相反するのでは?、共存できるのか?と思う方も多くいらっしゃるかもしれません。書籍の中では10名ほどの各チャプター内の主要人物が登場し、その人の生い立ち、取り組み、そして歴史的な背景も踏まえながら「気候変動対策」と「資本主義」が共存しうる、という力強い事例を丁寧に伝えていく構成となってます。
私が最も印象に残っている登場人物は中国の「EVの父」と呼ばれる政府の政策顧問、万鋼・元科学技術相でした。若い頃にドイツでアウディのエンジニアとしての勤務経験を持ち、その後科学技術相に就任、日本の自動車メーカーが強みを持つハイブリッド技術等には敵わないと早い段階で見極め、EV製造を通じて国内産業育成の先鞭を付けた人物として評価されてます。2010年代に国内で社会問題となっていた大気汚染・スモッグ対策という背景もあり、テスラ誘致、補助金政策等を総動員して現在のEV大国への礎を築いた過程が描かれてます。
世界をリードする電気自動車のビジョナリストはイーロン・マスクではない〜万鋼(Wan Gang)は、中国が電気自動車で欧米を飛び越えることを後押しした[2018/9/27 Bloomberg *Gift URL🎁 ]
もう一人挙げるならば、国際エネルギー機関(IEA)のファティ・ビロル(Fatih Birol )事務局長についてのストーリーです。IEAといえば先月も『Net Zero Roadmap』と題したレポートを公開し、気温上昇を抑えるために再生可能エネルギーの設備容量を2030年までに3倍に拡大するよう提言する等、再エネ・脱炭素を牽引する組織のように見えますが、実は1974年石油供給を確保する産油国ために設立された国際機関です。ビロル事務局長は、トルコのイスタンブールで電気工学を学んだ後に実は映画監督を目指し実際に受賞経験もあるほどですが、その後IEAの経済アナリストとしてIEAに参画し、持ち前のデータ分析力、ビジョンを武器にトップのポジションまで上り詰め、現在もネットゼロに向けて活発なリーダーシップを発揮しています。X(旧Twitter)では78万人、Linkedinでは11万人以上のフォロワーを持ち日々頻繁に投稿を発信していて、データやグラフを通じて現在・未来の脱炭素社会の様子を垣間見ることができます。
なお、今回の書籍はこちらも毎週聴いているお気に入りのポッドキャスト『経済番組グリーンビジネス』でも、アクシャットさんとのインタビューの様子が日本語吹き替え版で分かりやすく紹介されてます。さくっと概要を知りたい方はぜひオススメです🙂。NewsPicksの記事でも紹介されてます。
気候テック・Climate Tech関連の書籍は過去にも以下のようなタイトルが出版されてますが、「Climate Capitalism」も日本語版が出版されることを期待しています🤞。ダイジェストを詳しく知りたい方がいらしたら必要に応じてイベント開催等もやってみたいと思います。興味ある方はぜひお便りください:)
地球の未来のため僕が決断したこと 気候大災害は防げる[ビル・ゲイツ著 2021/8]
グリーン・ジャイアント 脱炭素ビジネスが世界経済を動かす [森川 潤著 2021/9]
Speed & Scale(スピード・アンド・スケール) 気候危機を解決するためのアクションプラン [ジョン・ドーア著 2022/11]
クライメートテック 新しい巨大経済圏のメカニズム [宮脇良二著 2023/8]
【2】東証、カーボン・クレジット市場で脱炭素後押し 11日から売買開始 [10/11 日本経済新聞]
東京証券取引所は11日、二酸化炭素(CO2)排出量を取引するカーボン・クレジット市場を開設。再生可能エネルギーの導入や森林整備による排出削減分の売買の透明性を高め、企業の脱炭素を後押しするとされてます。
11日の取引初日は「再エネ(電力)」など5種類で計3,689トンの取引が成立し、取引価格が最も高かったのは、森林管理などによる排出量削減に認証する「森林」の午前の取引で、1トンあたり9900円だったとのことです。今後の推移に注目です。
【3】トヨタと出光、全固体電池を27年度に生産 国内に設備 [10/12 日本経済新聞]
トヨタは電池材料の製造技術に知見のある出光と連携し、全固体電池の量産で世界に先駆けるとのこと。2027年度には国内で生産ラインを稼働させ、27〜28年に発売するEVに搭載して商品化すると報じられてます。
【4】米紙が見た、EV市場で苦闘する「トヨタの焦り」と「日本政府の楽観」 | 「車輪のついたiPhone」のような中国車の衝撃 [10/12 クーリエ・ジャポン]
【5】EV戦争 2023 : 週刊エコノミスト 2023年10月10・17日合併号 [週刊エコノミスト]
EV戦争に関して約12本の特集記事が掲載され、緊迫感が伝わってきます。
【6】「脱炭素」が「中国依存」を深めるというジレンマ――いま日本に求められる「グリーン経済安保」- 北村滋:前国家安全保障局長 [10/9 文春オンライン]
【7】The global backlash against climate policies has begun(気候変動政策に対する世界的な反発が始まった〜コスト、利便性、陰謀論が緑の支持を弱める) [10/11 The Economist]
米国のトランプ元大統領、英国のスナク首相、フランス極右政党を率いるマリーヌ・ルペン氏のような政治家が積極的な気候政策に対する世界的な反発を受け、懐疑的な発言を強めている状況がある一方、中国における脱炭素化の努力、エネルギー技術の急速な進歩等、慎重な楽観論の理由も紹介されてます。
【8】Bill Gates-backed Breakthrough fund targets third $1bn capital raising (ビル・ゲイツが支援するブレークスルー・ファンド、3度目の10億ドル増資を目指す)[10/13 Financial Times]
ビル・ゲイツ支援のブレークスルー・エナジー・ベンチャーズは、気候変動に取り組む企業と技術に投資するために10億ドル(約1,500億円)を調達することを目指していると報じられてます。このファンドは、エネルギーや農業などさまざまなセクターで約140の投資先スタートアップ企業を持つことを目指しているそうです。ゲイツ氏は、追加の投資ファンドにも続けて出資する予定であると述べています。最初の2つのファンドはそれぞれ約10億ドルと12.5億ドルで、ジェフ・ベゾスやムケシュ・アンバニなどの著名な投資家が参画。ゲイツ氏は、気候変動への対応に技術を支持していますが、長期的な解決策としての炭素回収と貯蔵(CCS)には懐疑的な一方、直接空気を吸収するDACスタートアップには投資しています。
*ブレークスルーエナジー・ベンチャーズの投資先ポートフォリオ企業として現在92社が掲載されてます。
【9】米国、エクソンや三菱重工の水素生産計画に1兆円支援 [10/14 日本経済新聞]
米バイデン政権は13日、全米7カ所を水素の生産拠点として選定したと発表した。70億ドル(約1兆円)を助成し、温暖化ガスを排出しない次世代エネルギーとして期待される水素の活用を後押しする。経済の脱炭素化を促して「水素大国」を目指す。三菱重工業のプロジェクトも選定され、日本への輸出を視野に入れる。水素は燃焼しても温暖化ガスを出さない。長距離トラックや工場の熱源といった電化が難しい分野での活用が期待されている。
【10】【動画・資料公開】10月6日開催「気候変動アクション日本サミット2023」[10/11 気候変動イニシアティブ – Japan Climate Initiative – JCI]
2023年10月6日(金)に開催された「気候変動アクション日本サミット (Japan Climate Action Summit: JCAS) 2023」のアーカイブ動画、登壇資料が公開されてます。国内外からの様々なスピーカーが登壇し、気候変動対策の現状における課題、また共創・協働を通じた取り組み事例等が紹介されてます。
【*10/10 配信の英語ニュースレター 「Japan Climate Curation」(購読者数1,857人)】日本国内で起きている気候変動・脱炭素関連に関して、英語で書かれているニュース・トピックスを毎週火曜日に約10本配信しています。同じ内容をSubstackでも配信中です(購読者数182人)。
Japan's net-zero strategy / BlackRock's bet on Japanese climate tech / green-washing claim [10/3-10/9]
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🌏Climate Curation 情報源 [気候変動・脱炭素・気候テック (climate tech ) 関連情報]:https://bit.ly/ClimateCuration_Info [ストック系情報 : 掲載数101]
🌏Climate Tech List ⚡ :https://twitter.com/i/lists/1611344400122253312
*気候変動、脱炭素、気候テック関連のリサーチ等にも力を入れています。海外の業界動向調査やコンサルティング等、お仕事のご相談・ご依頼がありましたら、どうぞお気軽にご連絡下さい。
では、どうぞよい週末をお過ごしください🙂🙋
市川裕康 株式会社ソーシャルカンパニー | www.socialcompany.org
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