こんにちは。新しく登録してくださったみなさん、ありがとうございます。直近1週間の気候変動・脱炭素・Climate Tech関連の国内外のニュース・トピックをご紹介するニュースレターを配信している市川裕康と申します。継続して読んでくださっているみなさん、いつもありがとうございます。おかげさまで「Climate Curation」は現在Substackにおいて510名を超える方に購読頂いてます。先日新しくスタートしたLinkedinのニュースレターでは既に840名を超える方に登録いただき心より感謝いたします。
【⭐📰👀今週気になったニュース・トピックス】
今週1週間の気候変動関連のニュースを振り返った際に印象的だったのは欧米において再エネ、特に洋上風力や太陽光発電に対する「後退」や「逆風」を伝える報道でした。金利上昇、資材価格の高騰、供給網の寸断等が理由として挙げられてますが、改めて気候変動対策の難しさを感じられる出来事でした。
【1】米国洋上風力「崩壊」、損失の連鎖 バイデン政権に逆風 [11/02 日本経済新聞]
米国の洋上風力発電で損失が相次いでいる。米国でのプロジェクトで欧州のエネルギー大手オーステッドやエクイノール、BPは合計約7400億円の損失を計上した。インフレや高金利、供給網の寸断で事業費が膨らんだ。BP幹部は1日、米国の洋上風力業界が「崩壊している」と発言しており、再生可能エネルギーを強化したいバイデン政権にとって逆風になる。
【2】The struggles of the offshore wind industry - Governments around the world have set ambitious targets to tackle climate change, but developers say power prices will have to rise to pay for it [10/31 Financial Times]
洋上風力発電産業の苦闘 - 世界各国政府は気候変動に取り組むために野心的な目標を掲げているが、開発業者はそのためには電力価格が上昇せざるを得ないと言う。
>今回は米国における洋上風力開発が大きな打撃を受けたとのことですが、既に洋上風力発電を稼働している国として中国や英国が存在し、そして現在多くを建設中のインドなど、世界各地で地域特性によって取り組みの状況が異なることが理解できます。
【3】The Solar-Panel Backlash Is Here - On sunny days, some states can waste lots of clean energy. Their response has been to make panels less affordable. [10/31 The Atlantic *Gift URL 🎁]
カルフォルニアやテキサスではソーラーエネルギーの余剰のため無駄につながっていて、ネットメータリングのようなインセンティブを削減することで太陽光発電導入をためらうことにつながっていると報じられてます。
【4】The global backlash against climate policies has begun - Cost, convenience and conspiracy-mongering undercut support for greenery (気候変動政策に対する世界的な反発が始まった - コスト、利便性、陰謀論が環境保護への支持を弱める )[10/11 The Economist *Gift URL 🎁]
米国、英国、ドイツ等、金利やエネルギー価格高騰等の影響で気候変動対策に反発の声が高まっているという声も。以下のチャートは過去10年で気候変動を脅威と感じる国が増えた一方で、気候変動対策に税金を投入することに消極的な国が多くあること等が示されてます。
【5】レポート「The Geography of Climate Tech(気候テックの地理)」(デロイト)
先日公開されたデロイトによる気候テックの世界各国の状況に関するレポートによると、過去20年間で、少数の国々が主導する形で、気候変動技術の活動や投資が急増し、特定の低排出技術がより広く開発されるようになったことが示されてます。
レポートは世界中の2,600社以上の気候変動関連企業のデータを用いて気候テックスタートアップの動向を分析し、2000年から2022年までに約2,400の気候テックスタートアップが設立され、1,480億ドル(約22兆円)相当の投資が行われ、2013年以降の活動がかなり活発化していることが示されてます。
目を引いたのはよく目にするアメリカの影響力の大きさと同時に、投資額の比率が近年急速に高まっている中国の存在感です(2020年から2023年7月迄の期間において全世界の投資額の22%)。
ちなみに調査対象となった気候変動技術企業のうち、7つの気候変動技術が市場全体の半分を占めていて、内訳は①リサイクル・廃棄物管理技術(12%)、②短時間エネルギー貯蔵(9%)、③乗用車(7%)、④長時間エネルギー貯蔵(6%)、⑤代替タンパク質(6%)、⑥炭素回収(5%)、⑦EV充電(5%)とのことです。こちらも国ごとに力を入れている技術が異なり、参考になります。
【6】Climate Tech Investments Rise to $16.6 Billion in Third Quarter(気候関連技術への投資、第3四半期は166億ドルに増加) - [11/2 Bloomberg]
ブルームバーグNEF(BNEF)の新たな分析によると、気候技術関連企業の資金調達はこの2年間で最高の四半期となり、幅広い脱炭素・低炭素新興企業に対して166億ドル(約2.48兆円)の投資が行われたとのことです。
BNEFが追跡している6つのセクターの中で最も資金が集まったのはエネルギーで、7月から9月までのベンチャー企業の資金調達総額は74億ドル、次いで運輸(46億ドル)、産業(29億ドル)。投資額が最も伸びたのは、重工業の脱炭素化に注力する企業で、4四半期平均と比較すると84%もの増加で、投資家が環境に優しい鉄鋼への投資を倍増させたことが、この増加の主な要因であるとしています。
北京の国内での電気自動車購入を支援する政策により、バッテリー駆動の自動車を製造する新興企業への投資が増加した結果、中国本土は世界最大の気候変動技術市場の座を奪還し、25案件で総額45億ドルを調達したとのことです。対照的に、米国はディール数では首位を維持したものの、資金調達額では第2位に後退しました。
こうした調査レポートは調査実施者、対象、期間、手法によって異なるものの、大きな潮流を理解する一つの目安として引き続き注視しておきたいと思います。
【7】スタートアップ投資、VCの6割が増額計画 環境やAI強化 [10/29 日本経済新聞]
国内のスタートアップ投資が復調しつつあり、日本の主なベンチャーキャピタル(VC)の約6割が2023年度の投資額を前年度から積み増す計画であること、また、投資を強化する分野は最多の40社が「環境・エネルギー」を挙げたことが報じられてます。一方で絶対額においてはKPMGによると23年1〜9月のVC投資額は米国の1259億ドル(約19兆円)に対し、日本は33億ドル(約4,900億円)と約40分の1にとどまると指摘されてます。
【9】How solid-state batteries could transform transport - Toyota appears close to a manufacturing breakthrough that could accelerate the transition to electric vehicles. But will the technology ever be commercially viable? [10/28 Financial Times]
期待が高まる個体電池の仕組み、現状、商業化への期待や可能性について詳しく報じられてます。
【9】#グリーンビジネス 今回はアフリカのクライメートテックのトレンドについて Kepple Africa Ventures の品田諭志さんのお話。今回も聴き応えある&面白い内容でした。将来カーボンクレジット購入が必須の日本企業にとってビジネスチャンスが豊富にある様子もよく理解できます。
グリーンな未来への第一歩、脱炭素に向けて期待される再生可能エネルギー[9/26 KEPPLE]
*こちらはKepple社のアナリストが作成したレポート「【独自調査】エネルギー分野でグリーン成長戦略を後押しする脱炭素スタートアップ」が紹介されてます。グリーン成長戦略で成長が期待される14の重点分野から、エネルギー関連産業に分類される4分野(次世代再生可能エネルギー、水素・燃料アンモニア、次世代熱エネルギー、原子力)の解説、国内外のスタートアップ151社を分類したカオスマップ等が閲覧できます(メールアドレス等の登録でPDFのダウンロードも可能)。
【10】Saleemul Huq, Bangladeshi Spearhead on Climate Change, Dies at 71 - He pressed rich nations to compensate poorer ones for the disproportionate “loss and damage” they’ve endured because of greenhouse gas emissions. [11/3 The New York Times *Gift URL 🎁]
バングラデシュの気候変動開発国際センター長を務めるサリーメル・ハク氏が先週の土曜日に心臓発作で急逝されたという報道がありました。ハク氏は国内ではあまり知名度はないかもしれませんが、過去の気候変動の影響を受ける途上国や貧しい人たちのために長年尽力された人物で、過去行われた全てのCOPに参加し、気候変動による損失と被害(ロス&ダメージ)の枠組みづくり等に貢献した気候正義のチャンピオン(養護者)として世界的に知られている方です。私が昨年参加した気候変動について学ぶオンライン講座 Terra.do のゲストスピーカーとして登壇し、気さくにお話してくださったことを思い出します。心よりお悔やみ申し上げます。
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🌏Climate Curation 情報源 [気候変動・脱炭素・気候テック (climate tech ) 関連情報]:https://bit.ly/ClimateCuration_Info [ストック系情報 : 掲載数101]
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市川裕康 株式会社ソーシャルカンパニー | www.socialcompany.org
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