国内と海外で感じる気候変動・脱炭素・気候テック関連ニュースの違いとは?
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さて、今週も国内外で気候変動・脱炭素・気候テック関連のニュースが数多く報道されましたが、毎週感じることがあります。国内と海外とでよく話題に出るトピックに大きな違いがあることです。
国内:大手(中小)企業による脱炭素への取り組み事例(水素・アンモニア等含む)、トランジション(移行)ファイナンス、気候変動解説・入門コンテンツ等
海外:気候テック(Climate Tech)スタートアップの紹介記事、資金調達、政策、アクティビズム、EV・電池、再エネの導入の加速等
日本はエネルギー、食料、資源等を輸入に依存し、既存産業が成熟していることもあり、思い切った政策変更が難しいという事情もある点は理解しつつも、例えばイノベーションの源泉となるような気候テック関連の情報が国内で注目されず、十分に認知されないことで、世界的な潮流から遅れてしまうリスクがあるのでは、ということを強く感じます。
一方、欧米においてはGAFAで働いていたようなエンジニアや有名大学で博士号を持つ研究者が「climate tech」業界に過去数年「大移動」をして新しい産業を創出しています。一部のビジネスパーソンや新卒大学生がClimate Techに憧れ、気候変動の知識を学び、周囲の同僚や友人に刺激を受けて転職・起業を志す流れも大きなトレンドになりつつあると感じています。
国内においてはデジタル・グリーンで産業構造が大きく変化する社会に向けて「リスキリング」に注目が集まってはいるものの、労働移動する先の現在の「GAFA」に匹敵するような「climate tech・脱炭素」産業、EV産業そのものが育成されないことで、雇用先そのものが十分に提供しうるのか、と時々感じることがあります。
このニュースレターはそんなギャップを少しでも埋めることができれば、という思いで取り組んでいます。今回は国内と海外発のニュースに分けてトピックをご紹介したいと思います。
【補足】▼トランジションとは:日本語で「移行」の意味。特に鉄鋼や化学、運輸など現在の温暖化ガス排出量が多く、早期に脱炭素化が難しい産業の排出削減を指す。脱炭素社会の実現には温暖化ガスを排出しない「グリーン」な産業や事業の拡大が不可欠だ。それだけでなく、省エネや技術開発によって排出量の多い産業や事業の低炭素化を後押しする必要があるとの考えが広がっている。
*トランジションとは 排出多い産業の低炭素化後押し / きょうのことば [2022/8/2 日本経済新聞]
脱炭素の移行に向けた トランジション・ファイナンス[経済産業省]
【⭐📰👀今週気になったニュース・トピックス】
【1】🇺🇸 ビル・ゲイツ氏率いる「Breakthrough Energy」が主催のClimate Techカンファレンス「Breakthrough Energy Summit」がシアトルで開催(10月17日〜19日)
Breakthrough Energyが今回初めて開催したカンファレンスには、米エネルギー省グランホルム長官、米気候変動特使ジョン・ケリー氏、ブラックロックのラリー・フィンクCEO、マイクロソフトのブラッド・スミスCEO、Boston Consulting GroupCEO、ベンチャーキャピタリストのヴィナド・コスラ氏、ジョン・ドーア氏、Breakthrough Energy Ventureの投資先のスタートアップの起業家、科学者、投資家、行政関係者、ジャーナリスト等、合計約700名が集い、議論が行われ、ネットワーキングが行われたようです。ゲイツ氏のブログ、Gatenote他、MIT Technology Review①②, GeekWire①②、CNBC等で詳しく内容が報じられています。気候変動の影響の深刻さに警鐘を鳴らしつつも、20億ドルのファンド資金を既に105社に投資し、テクノロジーを活用した解決策に対しての楽観論が感じられる内容でした。日本の三菱商事も参画する「カタリスト」と呼ばれるファンドの初めての出資として、再生可能な航空燃料(SAF)を手掛けるバイオスタートアップのランザジェット社に5,000万ドル(約74億円)の助成が行われることも発表されました。なお、カンファレンスの様子は ハッシュタグ #BESummit2022をフォローすることで様子が伺えます。日本から参加された馬田隆明さんも数多くのツイートを投稿し現地の雰囲気を伝えてくださってます。
【2】🇺🇸 The 50 to Watch Campaign Page [2022/10/19 Cleantech Group]
アメリカの気候テック専門調査会社クリーンテック・グループが10月19日に「クリーンテック注目の50社」のレポートを公開しました。残念ながら知っている企業はほぼなかったのですが、来年、3年後、こうした企業郡から成長し、だれもが知る企業が生まれるのか、という視点で見てみると参考になるかもしれません。クリーンテックグループは毎年1月に「グローバル・クリーンテック100」というレポートも公開していて、こちらは国内でも折に触れて報道されてます。来年の1月のレポートにも注目です。
【3】🇫🇷🇨🇳 中国BYD世界へ、迎え撃つ欧州勢 パリから探るEV次の盟主[2022/10/18 Nikkei Live/Nikkei Mobility]
10月17日に開幕したパリ国際自動車ショーについての日経新聞社によるウェビナーでは、世界2位のEVメーカー中国BYDの出展が話題を呼んでいる様子、そして迎え撃つ欧州勢や日本勢の動きについて詳しく紹介されてます。「EV次の盟主は?」というオンラインアンケートの回答には300人近い視聴者が回答し、その55%が「中国」と回答、アメリカ(20%)、欧州(16%)、日本(10%)と回答していたことがとても印象的でした。
【4】🇮🇳Will India become a green superpower?(インドはグリーン大国になれるか?) | The Economist [2022/10/20 ] *Summary by summari
インドは現在世界第3位のCO2排出国で、電力のほぼ4分の3を石炭から得ており、しかも39基の石炭火力発電所を新たに建設中です。一方で、自然エネルギーを利用したクリーンな燃料である「グリーン水素」の開発を「国家的使命」と宣言し積極投資している状況、可能性について深堀り分析がされてます。
【5】🇨🇦Justin Trudeau Defends Canada’s Minuscule Climate Progress (ジャスティン・トルドー首相、カナダの気候変動に関するわずかな進捗を擁護)[2022/10/20 Bloomberg Green *Summary by summari]
普段あまり馴染みのないカナダの気候変動対策の現状について、ジャスティン・トルドー首相がブルームバーグ・グリーンのジャーナリストとの公開討論でインタビューに回答するという内容。カナダが長年気候対策に力を入れているにも関わらず(トルドー首相も2015年に就任以降重点政策として取り組んでいる)、1990年以降のCO2排出量の増加率がG7諸国の中で最も高く、一人当たりのCO2排出量もG20の中でサウジアラビアに次ぎ2番目に多いとのことです(日本は8位)。天然資源が豊富で、優秀な人材も多く、世界に先駆けてカーボンプライシングを導入している、とトルドー首相はアピールするものの、排出量は嘘をつかない、と厳しく指摘される姿が印象的でした。とはいえ、国のリーダーとして気候変動の複雑な事象に関してデータを交えながら明確に議論ができる姿に関しては素晴らしい、と感じました。Podcastはこちら
【6】🇦🇺Australia’s New Climate Politics Will Reshape its Entire Economy [2022/10/13 Bloomberg Green *Summary by summari]
オーストラリアでは今年の5月に「気候変動選挙」とまで一部で呼ばれる総選挙が行われ、9年ぶりに政権交代が実現し、気候変動対策の積極的な取り組みに勢いがついてます。9月には初めての拘束力のある排出量削減目標が可決され、 2030年までに2005年比で43%削減、2050年までにネットゼロを目指すことが法制化されました。ブルームバーググリーンのポッドキャストシリーズ「Zero」では、ラグビー元豪代表で日本のパナソニックでもプレーをしたことがあるデービッド・ポーコック氏(今年の春の総選挙で上院議員に選出)が独立系の議員として気候変動対策のキャスティングボードを握る立場にいることが紹介されていて、とても驚きました。ラグビーファンの方はご存知と思いますが、このような国民的な人気を誇る伝説的な人物が議会で気候変動を推進する国、ということで今後にとても期待が持てるのでは、と感じます。
以下はオーストラリアの公共放送が作成したポーコック議員の生い立ち、ラグビー選手から気候変動政策に取り組む政治家への転身の軌跡が描かれています。(ラグビー選手としての功績を称えるワールドラグビー日本チャンネルの動画はこちら)
【7】🇯🇵【SDGs】「1.5℃の約束」メディア関係者らが課題を議論[2022/10/13 テレ朝ニュース〜📺動画あり]
10月12日に気候変動解決のためにメディア関係者が日本記者クラブに集まり、各社の取り組みや課題を話し合ったことが報じられてます。参加者からは「メディア自身が気候変動対策を考えなければ、環境に配慮していると見せ掛けるグリーンウォッシュになりかねない」「自分たちが変わっていかなければならない。選ばれるメディアにならなければならない」などの視点も紹介されてます。
【8】🇯🇵 自民 “脱炭素化”実行本部が初会合 12月上旬にも具体策提言へ[2022/10/13 NHKニュース]
“脱炭素化を進めるため自民党が設置した実行本部の初会合が開かれ、政府が進めている10年間の工程表の取りまとめに向けて12月上旬にも、政府に具体策を提言する方針を確認した。自民党は、政府・与党が連携して検討を進めるため、岸田総裁直轄の「GX=グリーントランスフォーメーション実行本部」を設置し、13日初会合が開かれた。”
【9】🇯🇵岸田首相、菅、甘利氏が議連発起人 脱炭素へ、政局臆測も [2022/10/20 時事ドットコムニュース] 〜名称は「カーボンニュートラルのための国産バイオ燃料・合成燃料を推進する議員連盟」(仮称)。24日に衆院議員会館で設立総会を開催予定。
【10】🇯🇵カーボンニュートラルの最難題「トランジション」とは?化石燃料削減が難しすぎるワケ [2022/10/19 ビジネス+IT/Yahoo!ニュース]
【11】🇯🇵脱炭素化支援 日本政府と企業 タイに技術紹介の初官民合同会議[2022/10/20 NHK ニュース]
燃やしても二酸化炭素を出さないアンモニアの利用など、脱炭素化に向けた技術を日本の政府と企業が東南アジアのタイに紹介する初めての官民合同会議が開かれ、日本として東南アジア各国の段階的な脱炭素化を支援していく方針について報じられてます。
以上、今回は11のトピックを紹介させていただきました。一つでも参考になる情報があれば嬉しく思います。先週お伝えしたとおり、日々のニュースキュレーションのコーチング・コンサルティングにご興味がある方向けに実験的に『60分の無償コンサルティング』という形でお試しセッションを開催中です。こちらのブログ記事をご覧の上、ぜひお気軽にご連絡いただければ幸いです。
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市川裕康
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