COP27、テック業界のレイオフ、気候テック、労働移動
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【⭐📰👀今週気になったニュース・トピックス】
①COP27
さて、11月6日から18日までの期間、第27回国連気候変動枠組み条約締約国会議(COP27)がエジプトのシャルムエルシェイクで開かれる、ということで国内外のメディアで特集記事が数多く掲載されてます。今回は途上国開催ということもあり注目が集まる「損失と損害(loss & damage)」、ロシアのウクライナ侵攻によるエネルギー価格高騰、ESG(環境・社会・統治)に対する懐疑的な声等、いろいろな論点が議論されることと思います。
数ある記事の中で目を引いたのはThe Economistのカバー特集『Say Goodby to 1.5℃』というメッセージでした。16ページもの特集記事は「適応」について掘り下げた内容ですが、以下の巻頭記事では、現実に目をそらさず、適応策、そして炭素除去等の新しい技術に目を向けるべきと指摘されている点が新鮮でした。国内報道では炭素除去に関しての議論はあまり目にすることはないですが、少なくとも世界的なトレンドの大きな方向性を把握しておくことは大切なのではないかと思われます。
【2】The world is missing its lofty climate targets. Time for some realism [2022/11/3 The Economist]
世界は、高い気候変動目標を達成できないでいる。現実主義を貫くべき時〜地球温暖化を1.5℃に抑えることはできない
世界はすでに産業革命以前に比べて約1.2℃気温が上昇している。すでに排出された温室効果ガスの影響が持続すること、そして一夜にして排出を止めることは不可能であることを考えると、今、地球が1.5℃以上の気温上昇を回避することは不可能である。
このような状況への対応は、現実主義に徹するべきである。多くの活動家は、1.5℃が実現不可能であることを認めたがらない。しかし、そうしないことで、パリで犯した過ちを長引かせることになる。世界各国政府は、到達するためのもっともらしい計画もないまま、困難な目標を採択してしまったのだ。エジプトに集まった代表者たちは、偽りの希望に惑わされることなく、失敗に懲りるべきだ。もっと現実的になり、厳しい現実を直視する必要がある。第一に、排出量を削減するためには、より多くの資金が必要です。途上国、特に中所得国の政府は、豊かな世界と協力して民間投資を動員する必要がある。
第二の真実は、化石燃料は一朝一夕には捨てられないということである。
第三の真実は、1.5℃を達成できないのだから、気候変動に適応するためにさらなる努力をしなければならない、というものです。
最後に、地球が危険なほど高温になることを認めた以上、政策立案者は、より根本的な冷却方法を検討する必要がある。大気中の二酸化炭素を除去する技術は、現在まだ初期段階にあるが、大いに注目される必要がある。入射する太陽光を遮断する「太陽熱地球工学」も同様だ。どちらも気候変動活動家から不信感を持たれており、前者は誤った約束、後者は恐ろしい脅威とされている。
1.5℃をオーバーシュートしても、地球が破滅するわけではありません。しかし、それは一部の人々、生活様式、生態系、さらには国にとって死刑宣告となる。世界をより良い軌道に乗せる方法を真剣に考えずにこの時を過ごすことは、さらに多くの死刑執行令状にサインすることになる。
関連オススメ記事
・【そもそも解説】元外交官に聞くCOPとは? 脱炭素めぐる「戦場」[2022/11/4 朝日新聞デジタル]
・気候変動による「損失と被害」 パキスタンの大洪水から考える [2022/10/30 毎日新聞]
②テック業界のレイオフ、気候テック、労働移動
今週はツイッター社(イーロン・マスク氏)の動向に関しても連日報道が続きました。15年以上に渡ってサービスを利用しているものとして、全社員7,500人の半数の社員がレイオフされ、今後のサービスのあり方が大きく変化を余儀なくされる、ということは複雑な気持ちでした。ただ、こうした「テック業界の大量レイオフの先にあるもの」として考えてみると可能性、期待も含め考えることもできるのではないかと思っています。
▶Twitter社員「時代のおしまい」 解雇開始、日本でも[2022/11/5 日本経済新聞]
▶一時解雇9万人の衝撃 失速の新興企業「世界変わった」 冬のスタートアップ[2022/10/24 日本経済新聞]
▶気候テックに特化したベンチャーキャピタル Lowercarbonを経営するクリス・サッカ氏のツイート👇
解雇される素晴らしいみなさんへ。私はあなたたちの気持ちが分かります。私も解雇されたことがあります。最悪ですね。
いい知らせがあります。多くの気候テック企業があなたの才能を必要としています。気候変動に関する 経験は必要ありません。ただ興味を示してみてください。 このサイト[Climate Draft]を訪ね、シェアしてください。
▶[Climate Draft] は気候テックやVCのネットワークへの参加を促すサイトで、教育プログラム、求人・求職者マッチング等の情報も掲載されてます。
▶PwCの第3回年次報告書「State of Climate Tech〜気候変動技術への投資における惰性を克服する」
コンサルティング会社のPwCによる、今回で3年目となる世界のClimate Tech業界へのジャンルごとの投資額の推移等をまとめたレポートが公開されました。投資規模の減少傾向はあるものの、他のセクターと比べ気候テックセクターは比較的安定していること、また、「炭素除去」などの新しい分野に対しては投資額が増えていることが示されています。
テック業界でレイオフされた多くの技術者を含む人材規模は、上記のレイオフ・トラッキングサイト[https://layoffs.fyi]によると、2022年だけで750社/10万人を超えます。新しい成長産業セクターとしての「気候テック」を捉えることで、レイオフされた人にとっては辛い経験ではありますが、今後成長・拡大が見込まれるセクターへの労働移動が加速することが予想されます。
日本国内においては雇用環境、慣習、法体系が異なることもあり、「リスキリング」によるデジタル・グリーン分野への労働移動が期待されていることと思われます(実際気候テックスタートアップがセクターとしてまだ非常に小さく、受け皿にもなりえないのが現実と思われますが)。一見「荒療治」に見える米国で起きていることが今後3年、5年後にどのような変化をもたらすか、注視したいと思います。
③”書いても読まれない”気候変動関連の記事について
その他、今週気になったトピックとして以下のツイートを紹介させていただきます。この記事自体は書いた記者の方による率直で誠実なツイッター投稿含め、多くの方の目に触れているのですが、「気候変動関連記事がなかなか興味関心を持たれにくい」という点に関しては多く人が感じていることではないでしょうか。
書いてもなかなか読まれない…気候変動の記事で力不足を痛感する記者 他社の苦悩も知り考えたこと [2022/11/2 東京新聞]
以下のグラフはSNS分析ツール(BuzzSumo)を利用して気候変動関連キーワードを含む記事量(上)とエンゲージメントボリューム(下)を過去5年分抽出したものです。
記事数は「SDGs」が圧倒的に多く、その次に「脱炭素」、「気候変動」が続く形ですが、エンゲージメント(いいね、シェア等の量)を見ると、全体的に減少傾向があり、「SDGs」と「脱炭素」が逆転するような状況になっていることが伺えます。あくまで参照資料ではありますが、ロシアによるウクライナ侵攻によるエネルギー危機等を踏まえ、社会全体としてみた時に「気候変動」「脱炭素」というテーマ自体が話題になりにくくなっているのかもしれません。
ただし、過去何度かご紹介しているNewsPicksさんの特集動画コンテンツ『地球極限GREEENイノベーションジャーニー』は大きな反響があるようです。今までアイスランドの炭素除去施設、フランスの洋上風力発電施設、オランダの最先端の農業施設を躍動感が伝わる形で紹介されてますが、最終回は本日( 11/5)の22:00からのライブ配信で無料で閲覧が可能とのことです。
気候変動関連のコンテンツが「一般的に」興味を持たれにくい、という前提を踏まえた上で、切り口、表現方法等に工夫を凝らすことで、可能性が開けるのでは、とも感じます。
個人的に思うのは国家・外交・政策レベルのことの重要性は理解しつつも、新しい解決策、イノベーション、個人のキャリアにもつながるような未来志向の情報、コンテンツを分かりやすく伝えることにもっと力を入れていきたいと感じます。気候テック関連に取り組む新興・老舗企業の株を購入するという行為も含め、自分ごと化できるような視点を大事にしたいものです。
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市川裕康
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